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February 13, 2006

面白かった本/面白そうな本

 季刊状態のこのサイト、忙しさを言い訳に更新をすっかりさぼっていました。他の人のブログをみているだけで幸せ…という気持ちが強くなってきたので、店じまいしようかとも思うのですが、でもまあせっかくなので、しばらくは備忘録的に使おうかなと気を取り直しました。自分のためのメモを公開してどうするのという気もするのですが、もともと訪問者も少ないので、ゆるい感じで続けることにしました。

 というわけで、最近読んだなかで面白かった本と、これから読もうかなと考えている本のご紹介です。

○最近(といっても幅がありますが)読んで面白かった本

 ■稲葉振一郎『「資本」論』ちくま新書、2005年

 …『経済学という教養』(東洋経済新報社、2004)とセットで読みました。(経済)社会のエコロジカルな条件が観察者によって別様に把握されている/されうること(そのことによって、経済をめぐる問いの最適解が変化すること)、エコロジカルな条件の形成自体が経路依存性を有することの指摘が印象に残り、社会をモデル化する際の思考法の幅が広がりました。


 ■本田由紀、内藤朝雄、後藤和智『「ニート」って言うな!』光文社新書、2006年

 …本のなかでも明記されているが、本田さんと内藤さんの「(学校)教育」概念の違いが興味深かった。教育システムの抑圧性の指摘とその処方箋に関する内藤さんの議論は、イリイチの反学校論の読み方(ラディカルな批判を鏡にした学校制度の精確な把握)と同じように理解すると良いのかも。
 「ひきこもり」論とニート論を峻別せよという指摘はその通りだと思うし、「不活発層」と「不安定層」を混同せずに、別々の対応策を考えるべきという意見にも完全に同意するのだけれど、他方で、両者をつらぬく共通点を、現在のニート論のように個人責任論・心理主義的な把握図式とは違うかたちで考える必要もあるのではないか、という気もする。ニート論(「ニート」ではなく別のカテゴリーを使った方が良いかもしれない)と接合することで、ともすれば心理学・精神医学のフレームで理解されがちな、(俗流?)ひきこもり問題を、「就労問題」(働かないことを指弾する文脈ではなく、職業世界とどのようにつきあってゆくのかをめぐる諸問題)として捉える視点が浮上し、そこにはそれなりのメリットがあるようにも思う(それは「ニート利権」に過ぎないのかもしれないけれど)。その意味では、佐藤洋作・平塚眞樹編著『ニート・フリーターと学力』明石書店、2005は、「不活発層」と「不安定層」の両者を射程にいれた「ニート・フリーター」論を展開している点で興味深い。


 ■本田由紀『多元化する「能力」と日本社会』NTT出版、2005年
 …能力主義をめぐる日本社会の新しい動きを、議論の足場となるような実証的なデータを示しながら新しい枠組みで論じようとしていいて、入手しうるデータと諸研究の蓄積に裏付けられた社会学的な概念を総動員して現在を語ることの難しさとおもしろさ、何よりも筆者の社会的な使命感を感じさせられた。ただ、本書でいうところの「ポスト近代型能力」は、日本型の能力主義で要請された柔軟性と重なる点が多いようにも思えて(p.22の表で言えば、「近代型能力」と「ポスト近代型能力」の間に、「日本型能力主義で要請されていた能力」というものがあるような気がする。一定程度の創造性と協調性)、その異同がどうなっているのかが気になった。

 
 ■山田浩之『マンガが語る教師像』昭和堂、2004年
 …マンガ表現論として読むと違和感を感じるかもしれないが、教育社会学の領域における教師研究の知見を理解する(これが本書の目的だと思うが)には最適の本。あらためて気がついたことも多数ありました。


 ■萱野稔人『国家とは何か』以文社、2005年
 …国家というものの根強さと手強さについて、あらためて考えさせられることが多い本でした。「富の徴収」と「暴力の組織化」という生々しい身も蓋もない運動のもとで国家が存立しているのだ、と言われるとそうかもしれないと思う自分は単純なのだろうか。社会をある種の物理的な力の相から描き出す枠組みと、構築主義的な社会把握の両方にひかれるのですが、この二つはどうつなげば良いのかしらん。

 ○面白そうな本

 ■天田城介『<老い衰えゆくこと>の社会学』多賀出版、2003年、『老い衰えゆく自己の/と自由』ハーベスト社、2004年。
  前者は半分くらい読んだところですが、理論的と実証研究の組み合わせが絶妙で、勉強になります。「再帰的エイジング」という問題設定は、不登校やひきこもりをめぐる問題を考えるときのヒントになりそう。ライフコースの再帰性の高まりを、知識の生産・配分・受容という枠組みで考えるとどうなるのだろう。

 ■藤田弘夫・浦野正樹編『都市社会とリスク』東信堂、2005年…シリーズ「社会学のアクチュアリティ:批判と創造」のひとつ。中川清さんの「都市生活の展開・変容とリスク」が特におもしろそうです。
 
 力つきたので、このへんで。

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